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2013年6月23日 (日)

「呼ぶ山」 -夢枕獏 山岳短編集-

「神々の山嶺」で知られる 夢枕獏さんの短編集であります。だいぶ前に買ったのですが、なかなか読む暇がなくて、やっと読み終わりました。(笑) 山岳幻想短編集というよりも、山岳ホラー短編集に近いかもしれませんね。(笑)  収録された8作品の中には、霊山としての神の存在や不可思議、不条理、闇、閉鎖性、畏敬、幽玄、幻聴、幻覚などのエッセンスがあふれています。また、登山シーンなどのリアリティや臨場感は絶妙です。  現在は、登山ブームであります。山は、カラフルでファッショナブルな登山ウェアに身をつつんだ山ガールや山ボーイが闊歩し、明るく、華やいで、開放的な雰囲気になってきました。おかげで、本来 山が持っている幽玄さや闇、閉鎖性などを忘れてしまいがちですが、この本を読むと、山は本来、畏敬の世界、不可思議な世界なのだと改めて思ってしまいます。 

Img_06568作品のなかで、一番お奨めなのが、ラストの「歓喜月の孔雀舞(パヴアーヌ)」ですね。この短編は、宮沢賢治の詩集「春と修羅 」をモチーフにしています。冒頭の部分には、エピグラムとして「春と修羅 」の中の詩「無声慟哭(むせいどうこく)」の一説を引用しています。

わたくしが青ぐらい修羅をあるいてゐるとき
おまへはじぶんにさだめられたみちを
ひとりさびしく往かうとするか   
信仰を一つにするたつたひとりのみちづれのわたくしが   
あかるくつめたい精進(しやうじん)のみちからかなしくつかれてゐて   
毒草や蛍光菌のくらい野原をただよふとき   
おまへはひとりどこへ行かうとするのだ  

さらに、各章ごとのタイトルには、「春と修羅」の中の有名な詩「原体剣舞連(はらたいけんばいれん)」から引用しています。  

序章  こんや異装(いさう)のげん月のした       
二章  青らみわたるこう気をふかみ   
三章  蛇紋山地に篝(かゞり)をかかげ         
四章  肌膚(きふ)を腐植と土にけづらせ   
五章  四方の夜の鬼神をまねき   
六章  月は射そそぐ銀の矢並   
終章  わたるは夢と黒夜神 

いささか、前置きが長くなってしまいました。(笑)  舞台は、岩手県の北上山地とネパールのヒマラヤです。ネパールで出会った男女は恋に落ちました。事故で女は死に、女に恋した男は、女の故郷 北上山地の奥にある村を訪ねます。訪れた村 (黒附馬牛村、なんか遠野物語の世界ですね!) で、男が見たものは。。。。。。。ヒマラヤと北上山系、ともに5億年前の地質の層、アンモナイト、螺旋、宮沢賢治、呪術、魂月法!  『遠い異国で出会い、恋し、そして死んでいったひとりの女性の生れ故郷をたずねて、「ぼく」は北上山系の懐深くに分け入った。。。。。』 何とも切ない男女の物語であります。(笑) 

「無声慟哭」はこちらをどうぞ。
「原体剣舞連」はこちらをどうぞ。

Cimg2689岩手県北上山地の薬師岳。 北上山地の最高峰 早池峰山は蛇紋岩の山ですが、隣の薬師岳は花崗岩の山だそうです。隣同士なのに不思議ですね。(笑)

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